「・・・ここは?」
気がつくと、少女は暖かい部屋の中にいた。
木の香りがして、暖炉の中で薪がパチパチと赤く燃えている。
「おっ!目が覚めたか。家の前に倒れていたよ。この、操りの輪と一緒に。」
少女には何が起こったのかわからなかった。優しそうな老人が話しかけてくる。
一体ここはどこなんだろう。いろんな考えが少女の頭に浮かんでは消える。
「操りの輪は、はめられた者の思考をとめる。お前さんも、はめられていたんだな。」
「・・・。」
少女は思い出せなかった。自分に何があったのか。自分が何者なのか。
「名前は?」
名前?少女にはその意味すら、解らなかった。名前?自分の名前?
口の中でゆっくりと、一音一音、発音してみる。
な・ま・・・え・・・・。
「私は、ティ・・・ティナ。」
とっさに、浮かんだものだった。本当かどうかわからない。
けれど、今自分が思い出したこと。誰かに、ティナと呼ばれた気がする。それだけだった。
「ティナか・・・。いい名だ。」
ティナは、あの時一体何が起こったのか、必死に記憶を手繰り寄せた。
暗く冷たい洞窟。あの、機械の油の匂い。ほかには・・・。
「今は、何も思い出せないかもしれない・・・。だが、大丈夫だ。そのうち・・・
 時間が経てば、記憶も戻るはずじゃ。操りの輪は付けられた者の思考をとめ、
 人の意のままに動くようになる。お前さんのように・・・な。」
老人は、暖めた紅茶をティナに手渡し、話続けた。
ティナは出された紅茶を見つめ、一口飲んだ。ぽっと暖かいものが体に広がる。
「おっと!ゆっくりしている暇はないぞ。帝国軍だったお前さんは、この町のガード
 に追われている。」





老人が振り向くと、低い扉を叩く音が聞こえた。
「開けろ!!開けるのだ!!帝国の娘をかくまっているな!?」
ナルシェのガード達だった。
だんだんと、声は大きくなり、数は増えているようだ。

「ティナ・・・ここから、逃げなさい。」
そう言うと、老人は裏口に案内してくれた。壊れかけた扉に錆びた鍵。
「ここから・・・?」
ティナはためらっていた。これから、どうすればいいのか。どこに行けばいいのか。
ティナは混乱する。
「この先の炭鉱を抜けて、外に出なさい。大丈夫。後で、頼もしいヤツを
 送るから。だから、それまで逃げなさい。」
深緑の髪を結いなおし、ティナは出て行く決意をした。
「いろいろ・・・ありがとうございました。」
「いや、たいしたことはない。」
老人は微笑んだ。
冷たい風が吹き付ける外の世界に、ティナは足を踏み入れた。
ティナの姿が見えなくなって、老人は呟く。
「あの娘・・・。人間じゃない・・・。」





「いたぞ!!あそこだ!!」
橋の下でたくさんの、ガード達が叫んでいる。
ティナは、滑る橋をかけぬけた。



「なんとか・・・間に合ったみたい・・・。」
息を切らしながら、ティナが呟く。
薄暗い炭鉱は、何もないところだった。掘りかけの石炭や、道具や、いろいろ
置いてあるが、幻獣がいた炭鉱のような緊張は感じられなかった。



「いやっ!!なに?!」
いきなり、魔物がティナに襲い掛かってきた。
魔物はネズミの様な形で、尾が長い。
「いやーっ!こないで・・・。」
「ズズ・・ズズズ・・・。」
魔物は気持ち悪い音をたてながら、だんだん近づいてくる。ティナは涙目になった。
その時、手が短剣に触れた。
これは、ティナが帝国にいた時、護衛用にと備えられたものだった。

ティナはやみくもに、短剣を腰から抜き取り魔物を切りつけた。
「ズシャァァ・・・」

うめき声と共に魔物は消えていった。
「ハァ・・ハァ・・・そっか、剣を使えばいいのね・・・。」


ティナは、短剣を握り締め奥へ進んでいった。
炭鉱の最深部についた頃、声が聞こえてきた。
「・・・・・い・・・た・・ぞ・・こっ・・ち・だ・・・。」
「ガード達!?一体どっちに行けば・・・。」
迷っているうちに、ガード達が追いつきティナは取り囲まれてしまった。
「さぁ・・・覚悟しろ・・・。」
ガード達が、それぞれの武器を構える。

ティナが一歩下がった時、ズシンと辺りが揺れる。
「え・・・なに?!」
ティナのいた場所がはずれてしまった。ティナは下へ下へと落ちていった。
「キャーッ!!」




落ちたところは、岩がたくさん置いてあったフロアだった。
ティナはすぐ、起き上がろうとした。けれど、頭が痛む。割れそうなほど。


「魔導の力を持つ娘か・・・ヒッヒッヒッ・・・。」
金髪の派手な格好とした男が、ティナに操りの輪をつける。
ここは・・・。帝国の牢屋?
「ヒッヒッヒッ・・・そうだ。全てを焼き払うのだ。」
ティナは魔道アーマーに乗り帝国兵と戦っていた。背後には赤い炎が燃え、いろんな者が
犠牲になってゆく。
「我がガストラ帝国は、魔導の力を復活させた。選ばれた者のみが使うことができる
 神聖な力だ・・・。」
たくさんの兵士を前に、金髪の男と叫んでいる老人と・・・そして、背の高い綺麗な
女が立っている。
「今こそ、我がガストラ帝国が世界を支配するとき!」
「ガストラ皇帝バンザーイ!!」


ティナはゆっくり、頭をあげた。思い出してしまった、辛い、辛い過去だった。














魔道士2作目です。「魔道士おもしろかったです」と感想をいただき、とてもうれしいです。
とはいえ・・・だいぶ省略しました。今回のところ・・・。
なんか、自分で頭からプレイしたのは2年ほど前でして、ほとんど覚えていなかったです(汗)
いくつかの攻略サイト様、セリフサイト様を参考にさせていただきました。
1作目よりは少しやわらかい感じになったかな?(まだティナしかでてきてないけどね。)
皆様がご存知のように、背の高い綺麗な金髪美女はセリスです・・・。はい・・・。
(画面で見るとチビだけど)次回からついにロックが登場です!!
ゲーム中になかった話も取り入れていく予定です。では、ここまで読んでいただきありがとうございました。




                              
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