侵入者を阻むような頑丈な戸。壱番街ゲート。
塗装が剥がれ、サビも目立つ。二人は一度顔を見合わせ、辺りを見回した。
「で、どうやって入るかが・・・問題だよな。」
やっとのことで目的地に着いたという達成感で大きく伸びをした彼女は、
戸に描かれた 落書きをじっと見つめた。
「ゲートねぇ・・・。」
ふぅ・・・とため息をつき、いきなり、しかし思い切り、ミナは戸を蹴飛ばした。
「おいっ!やめろって・・・!」
ガコンッと鈍い音がして、戸が前に倒れた。
「随分・・・傷んでいたんだな・・・。」
グランはゲートがおかしいのか、ミナの力がおかしいのか、心の中で苦笑した。

柔らかな光に目が眩み、
一瞬真っ白な世界に包まれた二人だったが、自分の足元に広がる 光景を見た瞬間、
言葉を失った。
「ここが・・・壱番街?」
ミナのその言葉通り、二人が立っている地面は亀裂が走り、
鉄骨丸出しのビルに 破壊されたコンクリートの残骸。
鉄っぽい金属の臭いが漂い、人影は視界にない。
つい昨日までは平和だったこの場所に、爆破された傷跡が生々しく残されていた。

「ここもかよ・・・。」
グランは唇を噛み締めた。
白と黒。
あまりにも悲惨なこの光景から目を離すことができなかった。
ミナはふと、自分が住んでいる参番街を思い浮かべた。
涙が頬を伝う。
狂っている。この世界は狂っている・・・。
立ちつくしていた二人の足元から、コツンと寂しい音が響き、小石が転がった。

「奥まで・・・行ってみる?」
先に口を開いたのはミナの方だった。
硬く口を結び、じっとどこかを見つめるグレンの表情には、
つい最近まで自分たちが 平穏に暮らしていた故郷への想いと、それを破壊した者への憎しみがうつされていた。
ミナはそっと空を見上げた。
空などないはずなのに。
希望など、どこにもないはずなのに・・・。
そのうち、どこもこんな風に・・・。
ミナは言葉を呑み込んだ。

「・・・誰か・・いる!?」
気配を感じ、はっと後ろを振り向くと、神羅の下流兵士数人がこちらをむいている。
「誰だ!!?」

「やべぇな・・・。見つかっちまった。」
逃げなきゃ・・・。恐怖と焦りが頭の中で交さする。

「・・・こりゃ勝ち目ねぇな・・・。ミナ、別行動だ。また・・・あとでな。」
冷静を保つグランの言葉に、ミナは頷くことしかできなかった。
そうだ。
こういう時は一緒に動いたら危ないのだ。
グランはミナに小さく笑いかけた。
「待て!!殺してもかまわん!逃がすな!!」

二人は反対の向きに走った。
死ぬのは怖くないのに。 どうして逃げているんだろう?
瓦礫を掻き分け、せまい路地の方へ駆けていく。
グランはどうしたかな・・・。
荒く乱れた呼吸の中でミナはそっと呟いた。
「無事でありますように・・・。」
追手をまこうと夢中で走った先には、壱番街の無惨な光景が広がっていた。
さすがに、爆破されたあとの街には人影ひとつ見当たらなかった。
ミナの目に映る壱番街は、鉄パイプ、半分が燃えた木材・・・。
もう、廃墟としかいいようのない場と化していた。
もとは、公園だったのだろう。すべり台が大きく横転している。
あまりにも寂しすぎるこの場所だが、ミナは少し懐かしい感覚にとらわれていた。

「来たことあったかな・・・。」
誰も応えてくれる人はいないはずなのに、自然と言葉が漏れてしまった。

近くにあった、ベンチに座り、ふっと息を吐いた。
あらためて辺りを見回すと、壊れた時計が目に入った。
そういえば・・・。今、何時だろう・・・。
一人きりになり、これからどうしていいかわからず、ミナは急に不安感におそわれた。

「・・・いたか?・・もう・・一人は・・?」
その時だった。
まいたと思っていた兵士たちの声がわずかに聞こえる。
もう一人・・・? グランのことだろうか・・?つかまってしまったのだろうか?
頭からすぅっと血の気がひいていくのがわかる。
ミナは足音をたてず、静かにその場を去ろうとした。
しかし、
「いたぞ!!うて!!」
ガンッ!!
鈍い音をたてて、ライフルから放たれた弾丸は、ミナの近くにあった鉄パイプを直撃した。
ミナは、ほぼ反射的にどこか隠れることができる場所を探した。
数十メートル先に教会らしき建物があった。
あそこなら・・・・!!
そう思うがいなや、一目散に飛び込んだ。
ミナの運命を変えようとしている、その場所に・・・。












更新遅れてしまいました(汗
第3話となります。短くてすいません。
見事に話がメチャクチャになっております・・・。
大体、本編中に爆破されたのって、壱番街だったかな・・・?
あはは・・・・。