思ったより中は広かった。
教会といえばいいのだろうか?
木で造られた長いすがいくつもあって、奥からはステンドグラスのやさしい光が 漏れている。
ミナは太い柱の影に隠れそっと中を覗きこんだ。
しかし、反射された光がまぶしく何も 見ることができなかった。
段々と目が慣れてくるとともに、やさしい甘い香りがふんわりと漂ってくるのを感じた。
忘れかけていた、花の匂いが・・。

「誰?」
静寂をやぶるミナとは別の声。
頭からすっと血の気が引く。
見つかってしまった。
声から女だということがわかったが、姿、人数、神羅兵かどうかなど、
全くミナには把握できていない。
第一、人の気配がしなかった。
これには、ミナもおかしいと思った。
普段、あれだけ、外界に対し注意をして、警戒して生きているのに、
なぜ気づけなかったのだろうか・・・。
さっきだって、二人とも襲われる前に気配を感じて逃げた。
それなのに・・・。

「誰ですか〜?」
ミナは息をひそめた。
しかし、声は引き寄せられるように、ミナの方へと近づいてくる。


「!!!」
お互いがお互いの存在に驚き、一瞬、時が止まる。


「あなたは・・・?」
声の主は背の高い、やわらかな髪をきれいに結った女性だった。
見たところ、神羅の兵士やアバランチの一味でもなさそうだ。
年は20代前半といったところであろうか。
ピンクのワンピースがよく似合っている、
一言でいうと「かわいい」女性であった。

「・・・・すいません。しばらくか、かくまってくれませんか?」
しばらくの間の後、ミナが口を開いた。
この人は敵ではない。
自分の勘がそう言っている。


「え・・・ええ。」
相手も驚いているようだった。
きれいに結わえられた髪が、外から吹き込む風で なびいている。
「この匂い・・・花?」
女性はやさしく微笑むとミナを教会の奥へと案内した。


―――――――――どうして?
ミナは目を疑った。
そこは、辺り一面、色鮮やかな花たちで埋めつくされていた。
「ここ、めずらしいでしょ?」
ここはスラムだ。
日の光さえも、浴びることができない下の世界だ。
でも・・・それなのに、どうしてこんなに、たくさんの花が咲き誇っているのだろうか?
ミナはこの信じがたき光景に、涙がこぼれそうになるのを、ぐっとこらえた。

「私、この教会で、ずっとこの花たちの世話をしているの。
 スラムだけど、ちゃんと  根をはって生きている。」
そういうと、女性はまたにっこりとミナに笑いかけた。
ミナはこの笑顔は、足元に咲いている花と何ら変わりないものだと悟った。

「それよりあなたは、なぜここへ?」
少しためらったが、ミナはこれまでのことを語り始めた。


「死ぬのは怖くない・・・。」
「どうして?」
「なんで生きているのかさえも、わからないじゃない。」
ミナはそっとつぶやいた。
「なんで生きているか?知っている人なんていないよ。だって・・・それを 見つけるために、
 人は生きているんだから。少なくとも私は・・・ね。」
女性はすっと立ち上がりミナの手に花を握らせた。
「私、エアリス。何かあったらここにおいで。いつでも待ってるから。」
エアリスと名乗る彼女は、ミナの頭をそっと撫でた。
壊れやすいものを扱うように そっと・・・。
「・・・。」
ミナはただ黙って、足元の花を見つめていた。
エアリスは・・・自分がどうして 生きているか、生かされているか、自分なりの答えを見出している。
ミナにとって、今、一番必要なもの。
広い教会にたくさんの花。
ここがエアリスの居るべき場所なのだ。


「・・・・ミナ。下の名前は知らない。」
ミナが自分の名を知らないことを、エアリスは驚かなかった。
また、それに対して 深く追求しなかった。
「ミナ?」
エアリスは確かめるようにミナの名を声に出した。
淡いピンクのワンピースがふわりと広がった。
ステンドグラスの光と露にぬれた花が、宝石のように輝いていた。


どれくらい経っただろう?
ミナは急にあることが心配になった。
グラン・・・は?
あの神羅兵が言っていた言葉が蘇る。
もう一人・・・。
あれは、一体どんな意味が込められていたのだろう?
一人は自分、もう一人はグランだ。 だとすると・・・。
嫌な考えを振り払い、ミナはここを出ようとエアリスに声をかけた。

「私はここに居るから。」
きれいな青い瞳だった。
ミナは無言で頷くと、そのまま出口へ・・・自分の帰るべき場所に向かった。
その姿を見送るエアリスは、無意識のうちに自分の服を握りしめていた。

じっとりと、手が汗ばんでいた。









一気にUPしようかと思いまして・・・。
ついに2008年ですね♪

エアリスやっと登場だぁ・・・(汗
この後どうなるかって??知りません!!
本当、どうなるんでしょうね・・・?(汗