「ねぇっ!!みんな集合っ!!」
ハイウインドにユフィの声が響きわたる。
今日は一人でゴンガガ地方へと、調査に行かされていたのだが、何やらいつもの 数倍テンションが高い。


「ど〜したの〜?」
真っ先にユフィの元に駆け寄ってきたのは、もちろんナナキ。
尻尾を振りながら、ユフィが 手にしている物の匂いをかいでいる。
「なんだ?またハライタか?」
「あら、ユフィ!おかえり!」
ぞろぞろと集まってくる仲間に対して、ユフィは得意げに持っていた箱のフタを開けてみせた。
「じゃ〜〜ん!!」
「・・・・?」
一同、そっと中を見つめる。
「こ・・・これって、すごろく?」
なんで、こんなものが?
誰もが思っていることを、代表してシドが口を開いた。
「おめぇ・・・これどっから、かっぱらってきたんだ?それに、第一何に使うんだ?こんなもの・・・。」
渋い顔をして中を覗くシドに、ユフィはにやりと笑った。
「別に盗んだわけじゃないよ。もらったの。さっき、ゴンガガに行ってきたときにサ。」
「で、どうすんだ?これ・・・。」
とクラウドが、すごろく本体を取り出してみる。
色鮮やかなボードには、たくさんのマスが描かれている。
細かい字でそれぞれに、指示が記され、どうやらかなり本格的なものであるらしい。

「そう。そこで!!臨時ゲーム大会!!これで、今日から1ヶ月間の食器洗い当番を決めようじゃありませんかっ!!」
「あほらし。」
やれやれとため息をつくクラウド。
確かに、食器洗いは、一番面倒で誰もやりたがらない仕事だ。
そんなわけで、いつも最後に食べ終わる者(大体はクラウド)が全ての、皿やコップを 一人で片付けている。
「なんで?クラウド?いつも、クラウドがやってるんだから・・・損はないだろ?  
 あ!!それとも何?この前のアップルパイの件、まだ根にもってるの?じゃなかったら、  夏の・・・・」
「それは言うな(怒)」
後ろでティファとバレットは苦笑い。
「じゃいいんだね?そーと決まれば、早速始めよ〜♪」
・・・またも、ユフィのペースにのせられてしまった一同である。




「やった♪オイラからだね。」
じゃんけんで順番を決め、スタートに各自こまを置く。
トップバッターはナナキのようだ。

カラカラカラカラ・・・・・・

ナナキは鼻で勢いよくルーレットを回し、針が指している数字を読み上げた。
「いち、に、さん、し、ご・・・・っと。」
「何か書いてあるわ。」
小さな文字でマスに書いてあったのは・・。

「みんなの前で、ここ一週間での悪事をザンゲしよう。だって・・・・。」
「待った!!オイラ悪いことなんてしてないよ!!」
とっさに否定するナナキ。
しかし、周りからは冷たい視線が浴びせられる。
「本当か?」
「ほんとうに!!」
「・・・・誓う?」
ティファの必殺、氷の目光線を浴びたナナキは、一瞬ためらう。
「う・・・うん・・・。」
「・・・・・・・ナナキ?」
「・・・・あ〜〜〜っ!!!ごめんなさいっ!!本当にごめんなさい!!3日前、ティファの部屋の  
 タンスをぐちゃぐちゃにしたのオイラなんだ!!」
「え!?」




―――――――――― 3日前の出来事
「きゃぁぁぁぁ!!!」
「ど・・・どうしたの!?ティファ!?」
「タンスが・・・!私の下着の引き出しが!!」
その日、ティファの部屋で事件は起こった。
何者かによって、ティファの下着の引き出しが荒らされたのだ。
いつも、きちんと整とんされているティファのタンス・・・。
まだ、誰も見たことがない未知の領域・・・。
結局、ユフィの犯人探しでは、見当もつかず、この事件は迷宮入りになってしまう勢いだった。
しかし・・・仲間達の間では、どうせクラウドだろうと、誰もが思っていたらしい・・・。


「げ!!ナナキだったの!?」
ユフィは身を乗り出して問い詰める。
クラウドは、自分の容疑が晴れた安堵と、赤いきつねに対する怒りと羨ましさで 頭がいっぱいであった。
「あの時、オイラのボールが中に入っちゃって・・・出そうとしたら、他のものまで・・・。」
頭と尻尾を垂らして話すナナキに、ティファは優しく声をかけた。
「今度から、ちゃんと話してね。」
「うん!」
ティファもナナキもほっとしているようだ。
その横でユフィが残念そうに・・・というか悔しそうに、舌打ちをした。
「クラウドだったら、面白かったのに・・・。」

カラカラカラカラ・・・・・・

クラウドがルーレットを回す。
「7か・・・。」
丁寧に1マスずつ数えながらこまを進める。
「ラッキ〜☆左どなりの人に肩を揉んでもらえるよっ。だとさ。」
「!!!」
これはしめた!!俺の左隣はティファだ!
ティファの心地よい指圧で、肩を揉んでもらえる!!

「あ〜悪いな・・・じゃ、お願いしま〜・・・イタッ!!」
それもそのはず・・・クラウドの肩はバレットがしっかりと掴んでいる。
「しょうがねぇな・・・」
クラウド、頭が真っ白になる。
「おっ・・・おい!!さっきと、座ってる位置違うんじゃ?!」
「ん?ティファなら、鍋の火、止めにいったぞ?」
予想外の出来事にクラウド君、泣きたくなる・・・。
(なんでいつも、こうなるんだよ・・・・。)
「痛い!!痛いって!!」
「ん?ああ、悪いな・・・。」
人間離れした、体格、怪力のバレットの肩揉みは骨が折れる程、強烈なものであった・・・。



3番手はユフィ。

カラカラカラカラ・・・・・・

「おっと・・・6だね。」
今回一番はりきっているユフィだったが、マスの指示を読んだ瞬間、顔が凍りつく。
「ねぇ・・・・。アタシ、こういうのはちょっと・・・・。」
「待てよ。何て書いてあるんだ?」
「あっ!ちょ・・!」
ユフィの手を無理矢理どかし、クラウドは小さな文字を音読した。
「チャレンジ☆右隣の人のほっぺにちゅ〜♪」
笑いをこらえる一同。
しかし、肝心のユフィの右隣、シドは・・・・。
「おいおいおい!!まさか・・・本気じゃねぇだろうなっ!?」
「アタシだってヤダよ!!こんなオッサン!!」
「でも、お前がやろうって言い出したんだろ〜・・・?」
冷ややかな笑みを浮かべるクラウド。
日ごろの恨みというものが、そのままうつしだされている。
「いいじゃないですか?ユフィはん・・・?」
もちろん周りも面白がっている。
「ちっ・・・・。みんな見ないでよ・・・?!」
「おい!!本当にやるつもりか!?」
「カエルにキスされるよりは、ずっとマシでしょ!?」

・・・・・ちゅ。・・・・

ユフィ、シド赤面。
ばっちりとその瞬間を目にした、仲間達は歓声をあげんばかりに興奮していた。
「はぁ・・・・。」
心の中でヴィンセントだったら良かったのに・・・と、ちょっぴり思うユフィであった。



次はバレット。
ごつい腕で、壊れそうなほど強い力でルーレットを回す。
「10だ!!10!!」
自分のこまを、スタートから10数えたマスに置いた。
「右隣の人に愛を語れ。・・・・・・バレットの右隣は・・・。」
「ヴィンセント!!」
「・・・・ん?なんだ?」
騒ぎを静かに、傍観しているうちに、寝てしまっていたらしい。

「愛を語れって・・・・!?告白しろってことか!?」
「まぁ〜そういうことですかねぇ〜・・・。」
自分の時は、あんなに焦っていたくせに、人の事になると興奮が最高潮に達するユフィ。
「・・・ヴィンセントにか?!」
「もちろん!」
きっと、恥ずかしくて普通の人なら顔が真っ赤に染まるはずなのだろうが、バレットの場合 顔の色が黒すぎて、変化が見られない・・・。
「あ〜・・・お前の・・なんだ?その〜・・・冷ややかな、いや、違うな・・・。クールなその視線に夢中  っていうか・・・・・・」
ユフィだけでなく、この場にいた全員が、半分マジになっているバレットを見て 声を殺して大爆笑。

「そうか・・・・。」
静かに言い放つヴィンセント。
・・・と同時に ぱちっと、ウインク ・・・・・・。



仲間達の笑いが一斉にぴたっと止まった。
それは、ティファの必殺技よりもバレットの肩揉みよりも、はるかに強い力をもつ究極の技 だったのだ。
何と表現したら良いのか、誰にもわからないが・・・。
彼は一体、何者なのだろうか?
特技    アップルパイ作り、ウインク

心の底から、彼の素顔を教えてくれと、叫びたい一同であった。






「ごちそー様でした!!」
「旨かった〜・・・。おっ!ユフィ片付けよろしくな!」
「・・・・・はいよ・・・。」


数時間に及ぶ激戦の結果、戦いを制したのはケット・シー。ビリがユフィ。
ヴィンセントの究極ウインクは、その後、誰一人として目撃した者はいない。
というか・・・見たくない気持ちの方が強いからかもしれない。


「手伝おうか?」
「え・・・?」
寂しく皿洗いをしていたユフィにヴィンセントが声をかけた。
静かに、ユフィの横に立ち、慣れた手つきでコップを洗う。

「ねぇ・・・・・?」
「ん?なんだ?」
ユフィは言いかけた言葉を呑み込んだ。もう一回、あれやってよ。と・・・。

「ううん。なんでもない♪」
皿洗いも悪くないな・・・。
そんな風に思いながら、泡に包まれる手をじっと見ていたユフィであった。












久しぶりのお笑いものです(汗
ヴィンユフィ・・・なのかな?でも・・・一体なんだ!?このすごろくは!!
ユフィがシドに・・・ぎゃぁぁぁ!!!
クラウド、毎回かわいそうですね・・・。
お正月なので、それっぽいものにしたかったのですが・・(泣