「あ〜ぢぃ・・・」
どうにもできないこの暑さ!!時は夏真っ盛りの7月中旬。ハイウィンドの室温は
30度を超し、全員がどろどろにとけていた。
ナナキは鼻がひからび、ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返している。



「ねぇ〜エアコンないのぉ?」
ユフィは、なるべく涼しい所にと、椅子の下に潜り込んでいる。
「けっ!そんなもん必要ねぇ!ハイウィンドには風があるだろ?風が!!」
とか言いつつ、自分も「暑い」を連呼し続けるシドであった。
「ったく・・・。マジでボロっちぃねぇ・・・。この船は・・・。」
愚痴をこぼすように、シドに嫌味を言いユフィは床に寝転んだ。
「・・・・お前のマテリアを売れば、エアコン位簡単に・・・」
クラウドは自分にしか聞こえない声で言ったつもりだったが、ユフィはしっかりと
聞き取っていた。
「ちょっと!!何さ?クラウドだって・・・弱っちぃ剣に、金かけてんだろ?」
「お前の、マテリア程じゃないけどな・・・。」
いつもなら、このへんでユフィがクラウドに飛び掛かるのだが・・・。
こんな暑い日は、そんなことできる元気がなかった。
「う〜ん・・・ほんとに暑いよ〜オイラの鼻カラカラだよ。」
もともとナナキは、暑い場所が苦手だ・・・・。やはり、犬と血がつながっているからだろうか?(え?)

「ねぇ・・・。」
ティファは、アイスクリームを食べようと冷凍庫を覗いた。
「ん?何?何?」
「・・・・怪談でもしましょうよ?」
辺りがシ〜ンと静まりかえる。
「え?怪談?怖い話のこと?」
ナナキはティファの話に興味を示した。
「そ。こわ〜〜〜い話よ。」
ティファは低く冷たい声で語る。シドもバレットもため息をついている。
「い〜じゃん!!やろうっ!アタシ怖い話、いっぱい知ってるよ!」
ユフィは飛び上がっている。ナナキまでもやる気になっていた・・・。
しかし、ここに断固反対する者が一人・・・・。
「俺はヤダ」
その言葉を聞いた途端、ユフィはニヤリと笑う。
「へぇ〜・・・。クラウドにも怖いものがあったんだぁ。あっ!それとも、愛しのティファちゃんに
自分の怖がるところを見せたくないと・・・?」
図星のクラウド君。真っ赤になっている。
「・・・。んな訳ないだろ・・・。」
ちゃんと、否定しているつもりのクラウド君。なのに、仲間達は
「へぇ〜・・・。クラウド、お化けダメなんだぁ・・・。」
「マジかよ・・・。クラウドさんよぉ?」
「・・・・・。ということは、クラウド・・・私のことも怖いのか?」
・・・・。ヴィンセントまでもが・・・・。
「・・・違う!!!」
・・・と、そこに今まで暑さでオーバーヒートしていた、ケット・シーがむっくりと
起き上がった。
「なんや、みなはん。そんな話なら、ボク!ケット・シーにお任せ!!早速、ゴーストホテルでも
手配しましょか?」
(余計なことをっ!!)
本当のことを、言うとクラウドはお化け(幽霊ともいう)が大の苦手だ。
どうして、クールで冷静なクラウドが、大がつくほどお化け嫌いになってしまったのか・・・。
それは、過去ティファのせいである。



10年以上前。まだ、二人がニブルヘルムに住んでいた時のこと。
「クラウド!肝試し行こ!!」
当時、ニブルヘルムでは神羅屋敷での肝試しが流行っていた。
そこで、クラウドはティファと・・・屋敷の中ではぐれ・・・。
「ク〜ラウ〜ドっ!!・・・もうっ!どこ行っちゃたんだろう・・・。」
真っ暗な神羅屋敷の中で二人は、お互いを探した。しかし、
「まぁ・・・クラウドだもんね。一人で帰れるよね・・・。」
と、幼いティファは一人でさっさと帰ってしまった。
ところが、クラウドはというと・・・。
「テ・・・ティファ〜〜・・・」
出口がわからず、なんと地下室で蛙のホルマリン漬けだの、豚の脳みそなどを
目の当たりにし、助けを求めていた。 が!数時間経っても助けは来なかった。さらに、疲れの幻覚でお化けを見てしまった。
と、いうことだった。
「お化け〜〜〜!!!」
そして、失神したと・・・。



「わぁ・・・。いいね!ちょっとは涼しくなるかもね。」
ユフィは足をじたばたさせて、マテリアを磨いていた。
「ゴーストホテルか・・・。前は随分世話になったな。」
吐き捨てるようにシドが言った。
「行かない・・・・・。」
クラウドは首を横に振る。
なんとしてでも、ユフィ主催の怪談大会を阻止するつもりだった。
「行くの!!」
ユフィも負けずに叫ぶ。
「行かない。」
「行く!!」
「行かない!!」
「行く〜〜〜!!」
「ちょっと待って!!」
二人の口論を制したのはティファだった。
「ごめんね・・・。私がバカな提案したばっかりに・・・。」
ティファは二人の間に入ると、クラウドに優しく微笑んだ。
「クラウド?いいんだよ・・・?無理しなくて。」
一見、悪気のないようなティファの発言にクラウドは頭にきた。
(おい!ティファにまで俺は怖がりだと思われているのか?)
唇を噛み締めるクラウド。そんなクラウドを見て、ユフィは楽しそうにニヤニヤと笑っている。
「どうする?クラウド?」
ナナキが心配そうに、下から見上げた。
「・・・・ぃく。」 そう言うしかなかった。
「え!クラウド・・・・?」
ティファは驚いたように、クラウドの目を見つめる。
「ああ。行くさ。今日はミッドガルで買出ししようかと、思ってたんだがな・・・。」
こんなのは、言い訳である。
「じゃぁ、決まりだね。今夜はゴーストホテルで怪談大会だぁ!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶユフィ。 クラウドはため息をつくしかなかった。



――――――――――――――― その夜
一行はゴールドソーサーのゴーストホテルに向かった。
「えと・・・。7人でお願いします。」
ロビーで受付を済ませ、暗い廊下を進む。
「ここも、だんだん経済が苦しゅうなってきましてな・・・。お客はんから、もっと 本格的につくってほしいという、要望がたくさんあるんや。」
このままでも、充分怖いとクラウドは思った。
部屋に着くと、ユフィは持ってきた蝋燭に火を灯し、電気を消した。
「じゃぁ!始めよう。」
仲間達は蝋燭を囲み、輪になって座った。
シドとバレットは酒を一本取り出して 既に、飲みはじめている。
「じゃあ・・・。誰から?」
「はい!!は〜〜い!!アタシからやる!」
「ユフィ・・・。お願いね。」
すると、ユフィは髪を前に垂らし顔が見えなくなるようにした。

「昔ね・・・・・・・。」
ユフィは静かに話しはじめた。
クラウドは、もう震えがとまらなかった。
「ウータイで戦争があった時に・・・・小さな女の子を一人ずつ・・一人ずつ・・ ダチャオ像から突き落としていったの・・・・・。」
ナナキがゴクリと唾を飲み込む。
「ひど〜〜〜い!!」
「生贄ってヤツだな。」
シドとバレットは二本目の酒を取り出し、酔っ払ってフラフラしている。
「うん・・・・。それで・・・。ある晩、一人の兵士が・・・・ダチャオ像を見に行くと・・・。 後ろからヒタヒタと・・・。」
「やめてくれ〜〜〜〜〜!!!!」
クラウドは叫んだ。頭から、つま先まで震えている。
「アハハ・・・・やっぱり怖いんじゃん!!ダッセ〜〜」
他の仲間も笑っている。 だが、ティファは・・・・。
「大丈夫だよ。クラウド・・・。ただの、作り話なんだし・・・・。」
そう言うと、ティファはクラウドの手をぎゅっと、握りしめた。
「ティ!!ティファ!!」
驚きを隠せないクラウド。顔が赤面する。
しかし、幸せもつかの間だった・・・。 いきなりユフィが叫んだのだ。
「・・・・シド・・・・・・・。う・・し・・・・・ろ・・・・・・!!!!!」
震えるユフィが指さした所に・・・・。
「ギャ〜〜〜〜!!!!!!!!」

なんと!長髪の女が立っていたのだ!!

「いや〜〜〜っ!!」

「うぎゃぁ〜〜〜!!」

「ひぃぃぃぃぃ!!!」


叫び声が部屋をつつむ。仲間達は失神した。
「・・・・・?」

冷静を取り戻したティファが部屋の電気をつけると・・・・そこには・・・。
「え・・・?」
「?」

「ヴィンセント!?」

そう。長髪の女とはヴィンセントのことだったのだ!!
彼は、ゴールドソーサーに来る前にミッドガルで本当に買出しをしてきたのだ。
「・・・・・・・どうしたのだ?」
倒れる仲間達を見てヴィンセントは不思議そうにティファに尋ねる。
「・・・聞かないで。」
ティファはそう言うしかなかった。



5人は朝まで起きなかったという。
女に見られたヴィンセントは機嫌が悪かったし
ユフィはプライドを傷つけられた。
クラウドも、ティファの前で倒れてしまい立場がなかった。
二度と怪談をしなかったのは言うまでもない・・・。



                                           E N D





クラウド君・・・。お化けが嫌いだったのね・・・(笑
なんか、クラティになっちゃってますね〜。
でも、ヴィンセントを暗闇で見たら確かに怖いかも・・・。